子どもを車内に残し「ほんの少しだけ」と思いながら車を離れた経験はありませんか?しかし、外気温がたった24℃でも、車内温度はわずか10分で40℃を超えることがあり、真夏でなくても、車内はまるでサウナのような環境になり、非常に高いリスクを伴うということはご存じでしたか?毎年、こうした状況で子どもが熱中症になる事故が後を絶ちません。今回は車内の熱中症の危険性についてお伝えします。
なぜ春や初夏でも車内の熱中症に注意が必要なのか?
気温が上がると注意したいのが車内での熱中症です。外気温が高い夏場はもちろんですが、過ごしやすい気温の春先から初夏にかけても、車内で熱中症になる危険性が高まるので十分注意が必要です。JAFのユーザーテストによれば、気温35度の猛暑日にエアコンを使用していない状態で直射日光の下に駐車した場合、30分で車内温度は40度前後に達しました。しかし気を付けるのは夏だけではありません。5月上旬にも同様のユーザーテストを行ったところ、2時間ほどで車内温度が40度前後になることがわかりました。これからの季節のお出かけの際も車内温度に気を付け、短時間であっても子どもやペットを車内に残して離れないようにしましょう。
子どもの体は大人よりも熱中症に弱い理由
大きな理由は2つあります。それは「汗をかく能力の低さ」と「体格と水分量の違い」です。
・汗をかく能力の低さ
まず大前提として「子どもと大人の身体の体温調節機能は全く違う」ということを頭に入れておきましょう。そして、子どもが熱中症になりやすい理由の1つ目が、体温調節にとても重要な役割を果たす「汗をかく能力」が、子どもはとても低いということです。体外に熱を放出させる(=深部体温を下げる)ために人間は「汗をかく」のですが、子ども(=思春期前の子ども)はまだしっかり汗をかくことができません。汗は「汗腺(かんせん)」という皮膚上にある腺から分泌されます(=要は、汗腺から汗をかきます)。汗腺の数自体は大人も子ども300万〜400万個程度、と変わらないのですが、実際に機能している汗腺が少ないため、大人と同じように「汗をかくことで体温を下げる」ということができないのです。汗をかくことによる体温調節機能が大人と同じレベルになるのは18歳ごろです。体温調節のメカニズムを知ることで熱中症を効果的に予防することができるようになります。
・体格の違い
身体が作り出す熱の量は、体重が増えれば増えるほど多くなります。つまり、体重50kgの人が作り出す熱の量と70kgの人が作り出す熱の量を比べると、70kgの人の方が、同じ行動をしたときに作り出される熱の量は多くなります。よって、体が大きい人ほど体内に生まれる熱が多いため、より多くの汗をかいて体外に放出しようとします。体内で作り出された熱を体外に放出するために、「汗をかく」ことともう一つ重要なキーポイントが「身体の表面積」です。身体が作り出す熱の量は体重が増えれば増えるほど多くなる、と上記しましたが、「体外と体内の熱移動の量」は逆で、体重が少ないほど相対的に表面積が大きくなるため、環境によって体温は上がりやすくもあり、下がりやすくもあります。よって気温が高い日は、大きい表面積によって熱をどんどん吸収してしまうとともに、汗腺が未発達なために汗もうまくかくことができないため、大人と比べ、子どもの方が熱中症になりやすいです。
車内温度が高いときの効率的な下げ方
車内の温度が高くなってしまったときに温度を下げる方法として、車内にもともと搭載されているカーエアコンを効果的に使うことで、暑くなってしまった車内の温度を効果的に下げることが可能です。車内温度が55℃と高温になった駐車車両の車内温度を下げるための方法として、最も早く温度が下がったのは「窓を全開にして車のエアコン(オート)を外気温導入、温度設定をLo(最低温度)にして走行し、2分後に窓を閉め、エアコンを内気循環にして3分間走行する方法」でした。この方法では5分後の車内温度が28℃になりました。
以下のイラストのように、窓を全開にしてエアコンを外気導入にして走り出し、車内の熱気を出したら窓を閉め、内気循環にして冷やすことが最も効率的に車内を涼しくする方法です。
(参考: こんな人は特に注意!「車に乗る人」 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進)
最後に
子育て中は、つい慌ただしくなりがちです。「今日は涼しいから、ちょっとだけなら大丈夫」----そんな油断が、取り返しのつかない事故につながるかもしれません。ほんの少しの注意が、大切な命を守ることにつながります。子どもを車内に残して絶対に離れないでください。「知っている」だけで防げる事故もあります。意識を変えることが、子供の命を守る第一歩です。
また、注意するのは子どもだけではありません。「車内で家族を待っているあいだ、エアコンを切っていたら熱中症になりかけた」という大人の車内熱中症になってしまったという事例もあります。車内熱中症というと子どもやペットの事故がよく報道されますが、大人であっても車内熱中症に陥る危険性は十分にあります。暑いと感じられる際は、無理をせず熱中症回避のため行動しましょう。