国土交通省が定めた自転車活用推進法では、5月は「自転車月間」としています。それに伴い、全国各地で自転車の安全利用に関する啓発活動が実施されています。最近は自転車の「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」などの危険運転が問題になる中、2026年4月1日に自転車交通違反に対する「青切符」が開始します。今回は、この「青切符」について解説いたします。
青切符とは?
青切符とは、「交通反則通告制度」の事を指します。交通反則通告制度とは、比較的軽微な一定の道路交通法違反について、反則者が警察本部長の通告を受けて反則金を納付した場合は刑事処分を免れる制度です。
反則金は行政罰であるため前科が付きませんが、納付は任意です。期限までに反則金を納付しないと、刑事手続きによる処理へと移行して刑事罰が科せられる可能性があります。
青切符による取り締まりを導入する背景には、交通事故全体の件数は減少している中、自転車の交通違反が重大な事故につながるケースが相次いでいることがあります。警察庁によると、2024年の自転車関係の事故件数は、67,531件で前年から4,808件減りましたが高い水準が続いています。このうち、自転車乗車中の事故で死亡した324人のうち、82%あまりにあたる266人には、自転車側にも前方不注意や信号無視、一時不停止などの法令違反が確認されたということです。
(出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250424/k10014788041000.html)
2024年11月から始まった自転車の「ながらスマホ」の罰則化等、自転車の交通事故を抑止するための法整備が進んでいますが、2026年4月からの青切符による取り締まり開始は2024年5月に可決・成立した改正道路交通法によるものです。
青切符対象となる違反と反則金額
青切符による取り締まりの対象は16歳以上の運転者で、100項目以上の違反が対象となります。そのため、高校生を含む学生など未成年者も反則金の支払い対象となる可能性があります。なお、酒気帯び運転や妨害運転などの危険な違反行為には赤切符が交付され、刑事罰の対象となります。
ここでは青切符の対象となる主な違反内容と反則金額(案)についてご紹介します。
切符の種類 |
違反内容 |
反則金額 |
反則切符(青切符) |
スマートフォン・携帯電話の使用 |
12,000円 |
遮断踏切立ち入り |
7,000円 |
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信号無視 |
6,000円 |
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通行区分違反(逆走、歩道通行など) |
6,000円 |
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指定場所一時不停止 |
5,000円 |
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制御装置不良(ブレーキがないなど) |
5,000円 |
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公安委員会遵守事項違反(傘さし、イヤホン使用で必要な音が聞こえないなど) |
5,000円 |
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緊急車妨害 |
5,000円 |
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並進禁止違反(横に2台以上並んで走る) |
3,000円 |
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乗車積載制限違反(2人乗り、過積載など) |
3,000円 |
今回紹介している内容は政令案で、警察庁では2025年5月25日までパブリックコメントを募集しています。
企業に求められるリスクマネジメント
細い路地の多い都心などでは移動のしやすさなどを理由に自転車を使った営業活動を行っている企業もあります。自転車は車と比べて維持費が低コストで環境にも優しい移動手段ですが、従業員の自転車運転マナーの悪さによって違反を起こしたり、最悪の場合事故を起こすリスクが考えられます。
自転車は子供の頃から乗る人が多く、免許制度がないため、交通ルールへの意識が低い傾向にあると言われています。従業員も正しい自転車利用ルールを知らず運転している場合もあるため、業務で自転車を使う場合には乗務前に教育を実施することをお勧めします。
また、万が一の事故に備えて自転車利用時の事故による損害をカバーできる自転車保険への加入やヘルメットの着用も行い、リスクマネジメントを徹底してください。
最後に
道路交通法では、自転車は軽車両に位置付けられた「車のなかま」です。道路を通行するときは「車」として交通ルールを順守する必要があります。今回の青切符による取り締まり開始をきっかけに、一度自分の自転車運転マナーを振り返ってみませんか。
そして正しいルールを知り、安全運転を心掛けて自転車を利用しましょう。