6月以降は梅雨や台風、最近では線状降水帯による大雨により、車が流される・冠水するなどの被害が出ることがあります。中でも注意したいのが「アンダーパス」での事故です。今回はアンダーパスでの事故をはじめとした、大雨時に命と車を守るための注意点をお話します。
大雨時にアンダーパスが危険なワケ
線路や道路の下をくぐる立体交差道路をアンダーパスといいます。水害時はこのアンダーパスでの事故が多く発生し、ニュースでも話題に上がっています。
ゲリラ豪雨や線状降水帯のように大量の雨が降ると道路の排水処理が間に合わず、低くなった場所に水が溜まっていきます。はじめは水深が浅くても、坂になった路面から一気に雨水が流入することで短時間に水位が上昇する恐れがあるので大変危険です。
また、アンダーパスに溜まる水は濁っていたり木片やごみが浮遊していることが多く、足元が見えにくくなります。正確な水深が分からないままアンダーパスへ侵入して車に浸水してくると、エンジンが停止し身動きが取れなくなる場合があります。浸水した際の地面から水面までの高さを「浸水深」といい、浸水深が大きくなるほど車の走行にも支障をきたします。10cm程度であれば問題なく運転できますが、10~30cmになるとブレーキ機能が低下し、30cmを超えるとエンジンが停止して車が使えなくなります。
浸水深 | 自動車走行 |
0~10cm | 走行に関し、問題はない。 |
10~30cm | ブレーキ性能が低下し、安全な場所へ車を移動させる必要がある。 |
30~50cm | エンジンが停止し、車から退出を図らなければならない。 |
50cm~ | 車が浮き、また、パワーウィンドウ付の車では車の中に閉じ込められてしまい、車とともに流され非常に危険な状態となる。 |
アンダーパスでの事故が相次ぐため、壁面への水位線表記やアンダーパス内に設置した水位検知器で表示板に警告を出すという対策もされつつありますが、全ての箇所についているとは限りません。そしてアンダーパスの通過は「これぐらいならこのまま通過できるだろう」という正常性バイアスという心理状態に陥りやすいとも言われています。
大雨が降っている時はアンダーパスには近づかず、無理な通行を避けるようにしましょう。
大雨時に命や車を守るポイント
アンダーパス以外にも低い土地で水が溜まりやすい場所や地下通路など、大雨によって道路が冠水する箇所は多くあります。また、土砂崩れが起きやすい山間部なども危険です。そこで大雨時に命や車を守るための対策を4つお教えします。
1:天気予報を確認する
運転前には行先までの天候を確認するようにしましょう。ゲリラ豪雨や線状降水帯といった大雨の予測も、最近ではインターネットで簡単にチェックできます。運転前の段階で雨脚が強い場合には小康状態になるまで運転を控え、運転中も天候悪化など危険を感じたら無理をせず安全な場所で待機するようにしましょう。
2:運転ルートを確認する
運転中に雨脚が強くなった場合に備えて、安全な運転ルートを確認しましょう。大雨時に危険なアンダーパスや川の付近、土砂崩れの起きやすい場所などを回避するルートを調べておくと、いざという時に安心です。各自治体が提供しているハザードマップでは、浸水・土砂災害などの自然災害リスクを地図化しており、危険箇所を知るには便利です。
3:防災用品を備える
万が一車が水没してしまった時でも脱出用ハンマーがあると、窓ガラスを簡単に破壊して車外へ脱出できます。カー用品店などで購入できるので、運転席から手の届きやすいドアポケットなどに入れておきましょう。
4:浸水する危険がある場所に車を停めない
崖や川に近い場所、低い土地にある駐車場や地下駐車場といった浸水のリスクが高い場所を避けて駐車することで、車が冠水することを防げます。さらに屋根のある保管場所を選ぶと、飛来物からも車を守ることができます。
車が水没した時の対処法
万が一車が水没した場合には、以下のポイントを押さえておきましょう。
1:車を停めてエンジンを速やかに停止させる
水によるエンジン内部の損傷や感電のリスクを減らすためにも、運転中に水が車内に入ってきたらエンジンはすぐに切りましょう。道路上で止まってもまずは停車させてから避難方法を考えます。
2:エンジン停止後は水が引いても再始動はさせない
車のフロアを超えて浸水した場合には、エンジンの吸気系に水が入っている可能性があり、その状態でエンジンをかけると故障の恐れがあります。道路から水が引いても、エンジンはかけないようにしましょう。
車を移動させる必要がある場合はニュートラルにギアを入れ、車を押して動かすようにしましょう。手で押して動かない場合にはロードサービスへ連絡してレッカー移動を依頼します。
3:車内に水が浸入してきたら慌てず脱出
水がさらに侵入して水圧でドアが開かない場合は、緊急脱出用ハンマーで側面のガラスを割って脱出します。なお、緊急脱出用ハンマーがない場合は車内水位と外の水位の差が小さくなったタイミングを見計らってドアを一気に開けて脱出しましょう。
4:脱出後は車をそのまま放置して安全な場所へ退避
車は水が引くまで放置し、その旨を購入したディーラー等へ連絡しましょう。水が濁っていて足下が見えづらいため、退避する際は「一歩ずつ慎重にゆっくり」がポイントです。すぐに冠水路へ飛び出さず、片足ずつつけて水深を測りながら、ゆっくりと進んできた方向へ歩いて戻ります。近くに傘や木の棒などがあれば、つついて足下を確認しながら進むと安心です。
そして車が水没した場合、気になるのは補償や車の処分についてではないでしょうか。任意加入する車両保険の多くでは、台風や大雨が原因で水没した場合には補償が受けられます。今一度加入している保険が、万が一の時に補償が受けられる契約内容かを確認しておきましょう。保険金の受け取り以外にも被災した車の写真があると、罹災証明書の受け取りなどがスムーズになります。「ここまで水に浸かった」と分かる写真を何枚か撮っておきましょう。
水没すると車内に臭いが残ったりボディに錆が発生するだけでなく、電気系統に不具合が起こりやすいため、修理なしにそのまま乗り続けることは難しいです。修理する場合・廃車にする場合いずれにしても早めにディーラーや整備工場へ連絡することをお勧めします。
最後に
浸水被害は日頃の備えと早めの行動で防ぐことができます。日常運転している時に道路や河川状況や危険場所を確かめ、情報を整理して情報共有することが大切です。万が一浸水してしまった場合にも冷静に落ち着いて行動し、命を守る行動を取るようにしましょう。