意外と知らない高速道路の交通ルール

 もうすぐゴールデンウィークがスタートしますね。この時期は旅行やレジャーなどで高速道路を使って、遠出されるドライバーも多くいらっしゃるかと思います。そこで、今回は「意外と知らない高速道路の交通ルール」をテーマに、スピード超過や飲酒運転などの誰もが知っている違反以外の、知っているようで知らない道路交通法を三つご紹介したいと思います。

1:追い越し車線を走りぬける

追い越し車線走行 高速道路の一番右側の車線は、通称「追越車線」と呼ばれています。この追越車線を「前車を追い越す」以外の目的で走り続ける車を時々、見かけることがあります。読者様の中にも「追い越すために車線変更をしたけれど、うっかりそのまま走り続けてしまった」というご経験をお持ちの方もいるかと思いますが、実はこの追越車線を走り続けるという行為は、「通行帯違反」に当たります。この「通行帯違反」について道路交通法の第二十条一号には、以下のように記載されています。

車両は、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車は当該道路の左側部分に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定める速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

 つまり、この法令によると三車線以上の道路では一番右の車線を通行してはいけない決まりとなっており、最も左側や中央の通行帯を走行することが大前提であるということが明記されています。  しかし、追越車線を通行することができる条件も存在します。その条件については、道路交通法の第二十条三号に記載があります。(下記参照)

車両は一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合において追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。

 これによると、一番右の車線を走行できるのは追い越しを行う場合や緊急車両などに道を譲る際、道路の交通状況などでやむを得ない場合のみ、ということになります。よって、追越車線を正当な理由もなく走り続ける行為は、違反に当たる訳です。
 なお、「通行帯違反」の取り締まりを受ける走行距離や走行時間に関する基準については、今のところ明確な決まりがなく、警察の判断に委ねられています。あくまで目安としてですが、一般的には「追越車線を2km以上続けて走っていると通行帯違反で取り締まりを受けやすい」といわれています。しかし、2km未満の走行でも取り締まりを受けたケースもあるため、一概には言えません。そのため、「通行帯違反」を未然に防ぐ対策としては、前の車を追い抜いたらすぐに元の車線に戻ることがベストだと言えます。

参考:「通行帯違反」の罰則については、以下の通りです。

行政処分:基礎点数1点  反則通告制度:大型車7,000円、普通車6,000円

2:「追いつかれた車両の義務」を怠る

追いつかれた車の義務

 ここまで、追い越しをする場合の「通行帯違反」についてご紹介しましたが、実は追いつかれた車両に対しても交通規則があります。意外と知られていない、「追いつかれた車両の義務」の詳細は、以下の道路交通法の第二十七条に記載されています。

車両は、政令で定める最高速度が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりも遅い速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
 車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においてはできる限り道路の左側端に寄ってこれに進路を譲らなければならない。

 この道路交通法の第二十七条を分かりやすく言い換えると、以下の通りとなります。

  • 速度の高い車に追いつかれた場合、自車は速度を上げて追い越しを妨害してはいけません
  • 車両通行帯の無い道路(一車線の道路)で追いつかれた場合は、出来る限り左端に寄り、道を譲ってください

 この道路交通法は、追いつかれた車が競うようにスピードを上げることで起きてしまう事故を防ぐ法律となります。これらの禁止事項・義務を怠り、追いつかれても道を譲らず後続車の走行を妨げることは「追いつかれた車両の義務違反」と判断され、罰則が発生してしまいます。

参考:「追いつかれた車両の義務違反」の罰則については、以下の通りです。

行政処分:基礎点数1点 反則通告制度:大型車7,000円、普通自動車6,000円

3:最低速度以下で走る

高速道路における交通違反の取締り内容の上位は、以下の通りです。

高速道路の取締り内容上位

 ダントツ1位の「最高速度違反」は「高速道路でやってしまいがちな交通違反」の中で、誰もがまず思い浮かべるものなのではないかと思います。この結果に対して、「自分はそんなに飛ばさないから問題ない」と思っている方も多いのではないでしょうか。

最低速度標識 しかし、高速道路では「最高速度違反」の逆に、「最低速度違反」でも取り締まりを受けることがあるということをご存知でしょうか。高速道路の最低速度は時速50キロと定められているので、それ以下の速度での走行は違反になってしまうのです。「最低速度違反」についての法令は、道路交通法第七十五条四号で以下の通り、明記されています。

自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合、及び危険を防止するため、やむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあってはその最低速度に、その他の区間にあっては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。

 高速道路での走行は、速すぎても遅すぎても取り締まりの対象となることを念頭に置き、常に安全運転を心掛けてください。

参考:「最低速度違反」の罰則については、以下の通りです。

行政処分:基礎点数1点 反則通告制度:大型車7,000円、普通自動車6,000円

最後に

 長距離移動の際に時間を短縮できる高速道路は非常に便利ですが、一般道とは異なる危険が潜んでいるため、たった一人のドライバーのちょっとした不注意やルール・マナー違反が原因で大惨事に繋がることもあります。そのため、事故を起こさないためにも、これを機にドライバーの皆様には今一度正しい交通ルールをご認識頂き、法令に遵守した安全運転に努めて頂ければ幸いです