日本版ライドシェア限定解禁!期待と今後の課題は?

著作者:storyset/出典:Freepik

 2024年4月から東京など4つの地域でライドシェアが限定解禁されました。都市部や人気観光地で慢性化しているタクシー不足を補う手段として、ライドシェアへの期待は高まっています。そこで今回は日本でのライドシェアとはどのようなサービスか、またライドシェアのメリット・デメリットなどをお話したいと思います。

ライドシェアとは

 一般ドライバーによる自家用車の相乗りサービスの事で、出発地や目的地が同じ人たちが相乗りし、有償で客を指定の場所まで送迎するサービスです。CO2の削減などの観点からもシェアリングエコノミーの一例として注目を集めています。

 ライドシェアと似たものに「カーシェア」がありますが、主な違いはサービス内容と使用する車両です。カーシェアがドライバーと車をマッチングさせるのに対し、ライドシェアはドライバーと同じ目的地に移動したい人をマッチングさせます。

 

ライドシェア

カーシェア

サービス

ドライバーと相乗り希望者のマッチング

ドライバーと貸出できる車をマッチング

使用する車両

ドライバーの自家用車

事業者が提供する車

 

 国によるライドシェア推進の背景には、運転手の減少があります。全国ハイヤー・タクシー連合会によると個人タクシーを除くドライバー数は、20233月末時点でおよそ23万人となり、コロナ禍前の2019年から2割減となりました。タクシー業界は運行管理や車両整備などの安全性が担保できないとライドシェア導入に反発してきました。

しかしインバウンドが回復した結果、都市部や観光地を中心にタクシーの供給バランスが大きく崩れ、タクシー不足が顕著となりました。これを機に解禁に向けた議論が活発になり、4月から限定的に解禁されることとなりました。

 

日本版ライドシェアの特徴

2404_2_1.png 限定解禁された「日本版ライドシェア」は、海外のライドシェアとは異なります。主な特徴はタクシー会社がライドシェアの運営主体となって地域の自家用車や一般ドライバーを活用し、その地域で不足しているタクシーの台数分を補う形となることです。

国土交通省からライドシェア事業者に認定されたタクシー会社は一般ドライバーに対し、運転技術や接客などの教育を行います。一般ドライバーが業務に就くと、勤怠管理やシフト作成などを担います。一般ドライバーの条件は過去2年間無事故・免停などの行政処分がないことで、二種免許は必要ありません副業も可能で、会社員が空き時間を使ってライドシェアのドライバーになる事もできます。一般ドライバーは自家用車だけでなく、タクシー会社の営業車を使うこともできます。

 日本版ライドシェアの利用方法ですが、原則「GO」や「S-RIDE」といった配車アプリを使ってオーダーします。オーダー時に乗車地と降車地を入力するので、乗車前に運賃が決定します。

支払いはキャッシュレスで、現金は原則使えません。また、走行しているライドシェアの空車を捕まえて乗ることもできません。

 

ライドシェアのメリットとデメリット

ライドシェア利用のメリットとデメリットは以下のようなものが想定されます。

<メリット>

~提供者側~

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  •  保有車両を活用して自由な時間に働ける
  •  バス・タクシー事業者の人材不足をカバーできる
  •  相乗りを促進してCO2排出量の削減も期待できる

 

~利用者側~

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  •  交通手段の選択肢が増える
  •  タクシーやハイヤーより安価で利用できる可能性がある
  •  利用者が運転手を評価する仕組みがある

 

<デメリット>

~提供者側~
  •  タクシー事業者や公共交通の顧客が奪われる
  •  乗車拒否される可能性がある
  •  運転手に対する企業の保証がない
  •  参入者増に伴う公共交通や環境への影響が懸念される

 

~利用者側~
  •  運転手と利用者の間でトラブルが起きる可能性がある
  •  需給状況や運転手によって料金が変動する

 

日本でのライドシェアの将来

 国土交通省は2024329日に、先行解禁した4つの地域に続くエリアとして「札幌市など」「仙台市」「さいたま市など」「千葉市など」「大阪市域」「神戸市域」「広島市など」「福岡市など」の8つの地域を公表しました。5月からタクシー会社によるライドシェアが可能になります。

 また、都市部で解禁されるライドシェアとは別に、自治体が運営主体となるライドシェアにも拡大の流れがあります。道路運送法の有償運送の規程には例外規定があり、過疎地域などにおいて地域住民の足を確保する目的で、自家用車や一般ドライバーの活用を認めるというものです。

これまでも市町村やNPOが管理運営する有償で人を運ぶコミュニティ型の自家用車活用は実施されており、地域住民にとって買い物や通院などに欠かせないものになっています。しかし、運行区域やコースが限定的で地域の交通問題を解決するには至っていません。

その中で有償運送の規程が大きく緩和されたことを受け、大都市圏以外の自治体でも活用したいという声が高まってきました。具体的にはタクシー会社ではなく自治体が主体となる「自治体ライドシェア」を推進したい考えで、地域振興や観光客誘致に繋がると考えられています。

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最後に

 世界のライドシェアリング市場は、2021年から2028年の予測期間においてCAGR(年平均成長率) 16.3%で、2021年の843億ドルから2028年には24273000万ドルに成長すると予測されており、世界的に拡大傾向となっています。

ライドシェアは移動コストの削減や環境に配慮できるというメリットがありますが、日本でのライドシェア全面解禁に向けてはまだまだ議論が必要なようです。ドライバーと客との間のトラブル、ドライバーの体調管理、事故が起きた場合の対応など課題が山積みですが、新しい移動の選択肢としてあるべき姿をこれからも模索していく必要があるのではないでしょうか。