安全運転管理者の届出義務とその役割

 車両管理に携わる方でしたら「安全運転管理者制度」についてはご存知かと思います。ですが安全運転管理者の役割についてはっきり答えられる方はどの程度いらっしゃるでしょうか。そこで今回は安全運転管理者の役割等についてお話したいと思います。

安全運転管理者制度

 安全運転管理者制度とは、一定台数以上の自動車を使用する事業所において、安全運転に必要な業務を負わせるものを選任させ、道路交通法令の遵守や交通事故の防止を図ることを目的として定められた制度です。

 次に定められた条件に該当する事業所は、安全運転管理者、副安全運転管理者を設定し、届出をしなくてはならないと道路交通法で定められています。

安全運転管理者

・「定員11人以上の自家用自動車」を1台以上使用している事業所
・自家用自動車を5台以上使用している事業所(自動二輪車1台は0.5台で換算)

安全運転管理者基準

副安全運転管理者

・20台以上の自家用自動車を使用している事業所
・20台につき1名の選任が必要(20台~39台=1人、40台~59台=2人、60台~79台=3人)

副安全運転管理者条件

 本社はもちろん、支店、営業所でも条件に合致すれば、支店・営業所ごとに安全運転管理者・副安全運転管理者を設定しなくてはなりません。また自動車運転代行業者は、上記の条件に関わらず全ての営業所において安全運転管理者を選任し、副安全運転管理者は10台ごとに1人選任する必要があります。

安全運転管理者の条件

 安全運転管理者は次の条件を満たしている必要があります。

安全運転管理者

年齢20歳(副安全運転管理者を選任する場合は30歳)以上で、次のいずれかに該当する者

・運転管理実務経験2年以上
・公安委員会の行う教習修了者は、運転管理実務経験1年以上
・公安委員会が認定した者

副安全運転管理者

年齢20歳以上で、次のいずれかに該当する者

・運転管理実務経験1年以上
・運転経験3年以上
・公安委員会が認定した者

上記の条件と合わせて安全運転管理者・副安全運転管理者共に、過去2年以内にひき逃げ、酒気帯び運転、無免許運転等の違反・事故の前歴がないことが条件となります。

安管の条件

 安全運転管理者を選任したら、選任した日から15日以内に管轄の公安委員会(警察署)へ届出書面を揃え、届出する必要があります。作成する書面は各都道府県警察のホームページからダウンロードすることも出来ます。

安全運転管理者の業務

 安全運転管理者は、安全運転を確保する為に事業所等の業務に従事している運転者に対する安全教育や、安全運転に必要な業務を行わなければなりません。具体的には次のような業務を行う必要があります。

1:運転者の適性の把握

運転者の適性の把握●自動車の運転に関する運転者の適性、技能及び知識を把握する
●道路交通法や命令の規定、また、道路交通法の規定に基づく処分に対する
 運転者の遵守状況を把握する

2:運行計画の作成

運行計画の作成最高速度違反、過積載運転、過労運転及び放置駐車違反の防止など
安全運転の確保に留意した運行計画を作成する

3:危険防止のための交代運転者の配置

交代運転手運転者が長距離運転や夜間運転に従事する場合に、疲労等により安全な
運転が継続できない恐れがあるときには、あらかじめ交代運転手を手配する

4:異常気象時の安全運転の確保

異常気象時異常気象、天災等により、安全な運転が出来ないと認められるときは、
運転者に対する必要な指示をするとともに、安全運転を確保するための
措置を講ずる

5:点呼・日常点検による安全運転の確保

点呼これから運転しようとする運転者に対して点呼を行う等により、日常点検を実施させるとともに、飲酒、疲労、病気その他の理由により正常な運転をすることが出来ない恐れがないか確認し、安全運転を確保するために必要な指示を与える

6:運転日誌の備付けと記録

運転日誌記録運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転距離その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付けるとともに、運転を終了した運転者に記録させる

7:運転者の安全運転指導

運転指導運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識など安全運転を確保するため
必要な事項について指導を行う

安全運転管理者の役割

 安全運転管理者は、道路交通法に基づく事業所での安全運転の確保に必要な業務を推進すると言う、大変重要な役割を担っています。運転者の健康状態の把握から、車両の状態、天候に至るまで、安全運転に関わること全てに気を配る必要があります。また安全運転確保のためであれば、乗務禁止などの権限を行使できる権利・義務のある、極めて重要なポジションといえます。ですから、安全運転管理者はその役割を自覚し、管理する運転者に対して正しい指導、適切な訓練、注意深い監督等に努めなくてはならないのです。

 事業所によっては、安全運転管理者が権限を行使するための権威を事業主から与えられなかったり、従業員の理解がなく協力を得られないなど、形だけになっている例もあるようです。ですが、事故を防止して損害を軽減し企業の社会責任を全うするには、安全運転管理者制度が適切に運用されることが極めて重要と言えるでしょう。