キムラユニティーの車両管理BPO

盗まれやすい車の共通点と盗難対策

 近年自動車の盗難件数は減少傾向でしたが、警察庁の発表によると2024年には再び増加して前年の5,762件から6,080件になったそうです。2025年も自動車盗難は増えることが予想され、特定の車両が集中して狙われる傾向が強くなっています。そこで今回は、自動車盗難されやすい車の特徴や愛車を守る盗難対策についてお話したいと思います。

 

自動車盗難の実態

 警察庁が発表した2025年上半期の車両盗難台数を見てみると、盗難台数上位の車は前年上半期の盗難台数に比べて多くの車種が増加していることが分かります。特にトヨタのランドクルーザーは765台と前年同時期と比べて175台も被害が多くなっています。

 

車名

2025年上半期

盗難台数

前年上半期

盗難台数

前年比増減

1位

トヨタ/ランドクルーザー

765

590

175

2位

トヨタ/プリウス

289

287

2

3位

トヨタ/アルファード

191

303

-112

4位

トヨタ/レクサスRX

141

80

61

5位

トヨタ/レクサスLX

120

112

8

6位

トヨタ/クラウン

107

44

63

7位

トヨタ/ハイエース

97

60

37

8位

トヨタ/レクサスLS

55

44

11

9位

トヨタ/ハリアー

50

17

33

10位

スズキ/キャリィ

43

44

-1

 
 同じ車でも新しい年式の車の他、西暦2,000年以前に製造された古い型式の車が盗まれることもあります。また、普通乗用車、軽自動車の他に小型・中型・大型問わずトラックを狙った犯行も発生しているとのことです。

参考資料:令和7年上半期における車名別盗難台数の状況(警察庁)
https://www.npa.go.jp/newlyarrived/2025/R7kamihankizidoushatounan.pdf

 

盗まれやすい車の特徴

 現代の車両盗難は高度・巧妙化が進み、古い車が狙われるという簡単なものではなくなりました。特に最近の傾向として「特定の条件を満たした車が組織的に狙われる」というケースが増加し、施錠をしていても盗まれる新手の手口もあるため、盗難被害は身近に迫っていると言えます。

ここでは盗難被害に遭う車の特徴と理由についてご紹介します。

1:海外での需要が高い車種

2508_1_1.png 盗難車の多くは国内で解体されて部品で売却される以外に、そのまま海外へ輸出されるケースが非常に多くなっています。特に中東・アフリカ・東南アジア諸国では、日本車の耐久性や車検制度など整備が行き届いている品質に対する評価が高く、高値取引の傾向があります。

 ランドクルーザーや、ハイエースは性能や耐久性から現地では重宝されるため、現地バイヤーの強い需要を背景に窃盗グループのターゲットとなり、盗難リスクが高くなっています。

 

2:市場価値の高い高級車・新型車

2508_1_2.png 高級車や新型車はそもそもの車両価値が高く、盗んでから早いタイミングで現金化できると言われています。レクサス、アルファード、クラウン等、外装や内装の高級感がある車種は、先ほど紹介した盗難被害台数でも上位に挙がっており、早く現金化したい窃盗グループにとっては効率のいいターゲットと言えます。特に限定モデルや新型はすぐに売れるためリスクよりもリターンを重視する窃盗グループの標的になりやすくなっています。

 

3:流通量の多い人気車種

2508_1_3.png 市場に多く出回る車種は盗んだ後の部品流用や転売がしやすく、足が付きにくいという利点があり、窃盗グループにとっては「安心して売れる商品」となります。
プリウス、ヴォクシー、ノアなどファミリー層に人気のある車は、事故修理や中古部品需要が高いため、解体して部品販売するのに適しています。

 

4:防犯対策がされていない・駐車場所が悪い

2508_1_4.png どんなに盗まれやすい車種でもしっかりと防犯対策がされていれば、発覚のリスクを嫌って窃盗グループはターゲットから外す傾向があります。逆に防犯対策がされていない車や人気のない暗い場所に駐車している場合には、窃盗グループから狙われやすくなりますので注意が必要です。

 
例えば以下のような状況は狙われやすい環境です。

・自宅前などで無防備に屋外駐車している
・監視カメラや照明のない場所に駐車している
・セキュリティ装置(ハンドルロック等)がついていない
・スマートキーの電波が常に出ている(遮断ポーチ等を使っていない)

 

5:スマートキー搭載車

2508_1_5.png 現代の車では標準装備になっているスマートキーですが、「リレーアタック」や「CANインベーダー」といった新たな盗難手口の登場により盗難リスクを高めています。スマートキー搭載車はセキュリティが高いと思われがちですが、新技術によって狙われやすいという側面も持ち合わせています。

リレーアタックは、犯人がスマートキーの電波を中継することで、本来は鍵を持っていないのに車に鍵が近くにあると誤認させて開錠・エンジン始動させる手口です。CANインベーダーは車のバンパー裏などから特殊な機器を使って車載コンピュータへ直接アクセスし、車両ロックを解除してエンジンを始動させます。CANインベーダーは近年増えている高度な技術で、わずか数十秒で車が盗まれることもあります。

 

愛車を盗難から守る対策

 では盗難から車を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。窃盗グループからターゲットにされた場合、完全に被害を防ぐことは難しいという前提はあります。ただ、犯人が盗みづらい、捕まりやすくなるような状況を作ることで盗難のターゲットから外れられる期待があります。

特に窃盗犯が嫌がるのは「時間人の目」の4つです。この4つを駆使しながら愛車を窃盗犯から守りましょう。

 

1:音

2508_1_6.png 警告音や警報装置は犯人をひるませる効果があります。窃盗時に生じる不自然な振動等を察知して、音が鳴る装置が有効です。

 

2:光

2508_1_7.png 駐車場を明るくすることで犯人が車に近づきにくくなります。人が近づくと明かりがつくセンサーライトの設置がおすすめです。特にCANインベーダーの対策として左前のバンパー部分を明るくしておくと効果的です。また、自宅以外の駐車場を使う時も外灯のついた明るい場所を利用しましょう。

 

3:時間

2508_1_8.png ハンドルロック、タイヤロック、車止めポールなど物理的に車を動かせないようにすることで、犯行に時間をかけさせます。そうすることで、犯人が窃盗を諦める可能性が上がります。

 

4:人の目

2508_1_9.png 防犯カメラが設置されている、人通りのある場所に面しているなど、人の目が行き届く場所の駐車はおすすめです。今では自宅の駐車場でも簡単に設置できる防犯カメラが安価に販売しています。スマホやタブレットでいつでも映像チェックができたり、スマホを通じてスピーカーを使い遠隔で警告できるものもあります。

 

 車本体への防犯はもちろん、車を停める駐車場やガレージへの防犯も大切です。警察庁でも複合的な防犯対策を行うことを推奨していますので、上記の対策以外にもセキュリティシステムの導入、GPS追跡装置の設置といったできる限りの対策を同時に実施しましょう。

また、車外から見える場所に財布やスマートフォンなどの貴重品を置かないといった基本的な防犯対策もお願いします。

 

最後に

 窃盗の手口も巧妙化かつ組織化しており、現代では「しっかりと鍵をかけていても車が盗まれる」という現状がありますが、まずは短時間でも車を離れる時はドアロックが基本です。犯人はその少しの時間を狙って犯行に及ぶこともあるので、隙を見せないようにしましょう。

 また車両保険に加入していると、盗難に対する補償を受けられる場合があります。日本損保協会の調査によると、盗難車が発見される確率は約24%、手元に車が戻ってくる確率は約19%と大変低くなっています。万が一盗まれてしまった後の対策として、自動車保険の契約内容の確認・見直しもおすすめです。日々の意識と対策が愛車を守ることになりますので、ぜひできることから防犯対策を始めてみてください。