事業で自動車を所有・使用している場合、交通事故などを防止し、安全を確保するために、企業では「安全運転管理者」と呼ばれる役割を選任する義務があります。
会社や事業所の車両管理に携わる方ならご存知の制度かもしれませんが、中には
「自社は安全運転管理者を選任する必要があるのか?」
「安全運転管理者はどんな業務を行うのか?」
と、安全運転管理者に対して様々な疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は安全運転管理者について、その選任義務や安全運転管理者の要件、その業務内容まで、詳しく解説していきます。
安全運転管理者の業務負担軽減のための方法までご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
1. 安全運転管理者とは?

安全運転管理者とは、運転者の指導や酒気帯びの確認、運行計画の作成などを行い、社内の安全運転を確保するための役割を担う存在です。
安全運転管理者制度は。一定台数以上の自動車を使用する事業所において、安全運転に必要な業務を負わせるものを選任させ、道路交通法令の遵守や交通事故の防止を図ることを目的として定められた制度です。
道路交通法の規定に基づいて、条件に当てはまる企業には選任が義務付けられています。
1-1. 安全運転管理者を選任すべき理由
安全運転管理者はもちろん道路交通法で定められており、法令を遵守して安定した企業活動を行うために選任が必要ですが、企業自身の安全と業務効率化のためにも、安全運転管理者は欠かせない存在です。
自動車を使用する企業では日常的に業務として運転を行う必要があり、交通事故のリスクが付きまといます。
事故や違反行為は企業の信頼にも大きな影響を与えるのはもちろん、人命に関わる事態になることもあるでしょう。
そんなリスクを軽減するためにも、安全運転管理者により運転状況の監視や指導を行い、安全対策を徹底することが必要です。
また、安全運転管理者の存在は安全のためだけではなく、業務効率化にもつながります。
安全運転管理者により運行計画や運行ルートの最適化を図ることができ、燃料などの無駄な消費を抑えられるため、コスト削減につながる可能性もあるでしょう。
2. 安全運転管理者の選任義務対象となる企業の条件
安全運転管理者の選任義務の対象となるのは、次の条件に当てはまる企業です。
- 「定員11人以上の自家用自動車」を1台以上使用している事業所
- 自家用自動車を5台以上使用している事業所(自動二輪車1台は0.5台で換算)

2-1. 副安全運転管理者が必要になる企業
前述の条件に加え、使用する自動車の台数が一定を超えると、安全運転管理者をサポートする「副安全運転管理者」を追加で選任することが義務付けられます。
副安全運転管理者の選任は、20台以上の自動車を使用している企業において必要になり、例えば40台の車両を使用していれば副安全運転管理者が2人必要など、それ以降20台ごとに1人選任する必要があります。

本社はもちろん、支店、営業所でも条件に合致すれば、支店・営業所ごとに安全運転管理者・副安全運転管理者を設定する必要があります。
また自動車運転代行業者は、上記の条件に関わらず全ての営業所において安全運転管理者を選任し、副安全運転管理者は10台ごとに1人選任しなくてはなりません。
安全運転管理者の条件
2-2. 選任義務違反には罰則も
安全運転管理者の選任義務に違反した場合には、罰則もあります。
2021年に安全運転管理者を置いていなかった企業での大きな飲酒運転事故が発生したことにより、2022年には道路交通法の改正で罰則が強化され、現在では安全運転管理者の選任義務違反など、安全運転管理者にまつわる罰則は以下のように定められています。
| 違反内容 | 違反条件 | 罰則 |
|---|---|---|
| 安全運転管理者および副安全運転管理者の選任義務違反 | 安全運転管理者や副安全運転管理者を選任する必要がある事業所にもかかわらず、安全運転管理者等を選任していなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
| 安全運転管理者の解任命令違反 | 安全運転管理者等の解任命令に従わなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
| 安全運転確保のための是正措置命令違反 | 都道府県公安委員会から自動車の使用者に対し命じられた是正措置命令に従わなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
| 安全運転管理者等の選任解任届出義務違反 | 安全運転管理者等の選任や解任をしてから15日以内に届出を行わなかった場合 | 5万円以下の罰金 |
3. 安全運転管理者選任の資格・条件
企業に選任義務が生じており、安全運転管理者を選任する場合、その人材には次のような条件があります。
安全運転管理者
年齢20歳(副安全運転管理者を選任する場合は30歳)以上で、次のいずれかに該当する者
- 運転管理実務経験2年以上
- 公安委員会の行う教習修了者は、運転管理実務経験1年以上
- 公安委員会が認定した者
副安全運転管理者
年齢20歳以上で、次のいずれかに該当する者
- 運転管理実務経験1年以上
- 運転経験3年以上
- 公安委員会が認定した者

上記の条件と合わせて、安全運転管理者・副安全運転管理者共に、過去2年以内にひき逃げ、酒気帯び運転、無免許運転等の違反・事故の前歴がないことが条件となります。
4. 安全運転管理者の業務内容
それでは、安全運転管理者に選任された場合、どのような業務を行うことになるのでしょうか。
道路交通法施行規則の一部が改正されたことで、安全運転管理者の業務も追加されており、その具体的な業務は、主に以下のように分けられます。
- 運転者の状況把握
- 運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交替要員の配置
- 異常気象時等の安全確保の措置
- 点呼等による安全運転の指示
- 運転日誌の記録管理
- 運転者に対する安全運転指導
- アルコール検知器による確認
- 酒気帯びの確認及び記録の保存
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1. 運転者の状況把握

まずは、運転者の状況把握です。
自動車の運転について運転者の特性・知識・技能や運転者が道路交通法などの規定を守っているか把握することはもちろん、健康状態やストレス、運転経験など、事故リスクを高める要因について把握し、管理を行います。
4-2. 運行計画の作成

運転者の過労運転防止、そのほか、安全な運転を確保するために、自動車の運行計画を作成するのも安全運転管理者の業務のひとつです。
効率的かつ安全に運行ができるよう、走行ルートや時間帯なども考慮して適切なスケジュールを組みます。
4-3. 長距離、夜間運転時の交替要員の配置

長距離運転または夜間運転では、疲労などにより安全な運転ができない恐れがあります。
そういった場合にあらかじめ交替するための運転者を配置し、安全を確保します。
4-4. 異常気象時等の安全確保の措置

豪雨や雪、台風など、異常気象・天災、その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずる恐れがある場合には、運行の停止やルートの変更など、安全確保に必要な指示や措置を行うのも、安全運転管理者の重要な業務です。
4-5. 点呼等による安全運転の指示

運転しようとする従業員(運転者)に対して、点呼などを行います。
日常点検整備の実施、飲酒、疲労、病気などにより正常な運転ができない恐れの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。
4-6. 運転日誌の記録管理

万が一の事故発生時などに問題点を洗い出すためなど、重要な資料として、出発や到着の時刻、走行距離など、運転状況を把握するために必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させます。
4-7. 運転者に対する安全運転指導

運転者に対して、交通安全教育指針にもとづく教育、自動車の運転に関する技能・知識、そのほか、安全運転を確保するために必要な事項について指導するのも、安全運転管理者の役目です。
4-8. アルコール検知器による確認

国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて、運転前後などに酒気帯びの確認を行います。
アルコール検知器を常時、有効に保持する管理業務も担います。
※アルコール検知器の使用義務化は2023年12月1日より施行
4-9. 酒気帯びの確認及び記録の保存

アルコールチェッカーを用いた確認はもちろん、目視なども含めて、酒気帯びがないかを確認します。
酒気帯びの確認は、その記録を1年間保存する必要もあります。
5. 安全運転管理者の届出方法
安全運転管理者は、選任したら、選任から15日以内に届出を行う必要があります。
届出は、自動車を使用する本拠地となる場所を管轄する警察署を経由し、公安委員会に行う必要があります。
届出は、以下の3つの方法があります。
- 警察署の交通課窓口へ行く
- 警察署の交通課へ郵送する(未対応の都道府県も)
- オンライン申請
近年ではオンラインでの届出も可能になっており、「e-Gov電子申請」や各都道府県での電子申請システムから手続きが可能です。
こちらも対応しているかどうかは自治体によって異なるため、事前に各都道府県の県警察サイトなどで確認しましょう。
5-1. 届出に必要な書類
届出を行うには、以下の書類が必要になります。
- 選任届出書
- 住民票
- 運転免許証の表面および裏面の写し
- 運転記録証明書
- 自動車運転管理実務経歴証明書
作成する書面は、各都道府県警察のホームページからダウンロード出来ます。
5-2. 選任時以外で届出が必要なケース
安全運転管理者は、選任時はもちろん、以下の場合にも届出が必要です。
安全運転管理者等を解任もしくは交代する場合
選任義務の対象から外れたなどで安全運転管理者を解任する場合、または退職や異動などで管理者の交代があった場合には、速やかな届け出が必要です。
届出内容に変更が生じた場合
企業名が変わった、企業の所在地が変わったなど、企業に関する情報で届出内容に変更があった場合にも、すぐに届け出を行わなければなりません。
6. 業務負担軽減に車両管理システム導入もおすすめ

ご紹介したように、安全運転管理者の業務は多岐にわたります。
その業務負担を軽減し、より効率的に安全運転管理を行うためにおすすめなのが、車両管理システムの導入です。
車両管理システムとは、社用車などの車両管理・安全確認をデジタル化により効率的に行うことができるシステムです。
その機能・サービスはシステムによっても様々ですが、
- 企業の持つ車両の一元管理
- アルコールチェックの連携確認・点呼
- 事故情報の管理
- 事故など緊急時の通知
- 車両コストの最適化のための比較
- 運転日報の入力
などを提供しており、
企業が安全かつ最適な自動車の使用を行うためのサポートを、パソコンやスマートフォンなどを活用してより効率的に行えます。
車両管理システムを導入することで、安全運転管理者の負担を減らし、より安全な運行が可能になるでしょう。
自動車を使用している企業は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回の記事では、自動車使用の企業で義務付けられている安全運転管理者について、詳しくご紹介しました。
ドライバーが業務中事故を起こした場合、損害を与えた従業員だけでなく、使用者である企業も賠償責任を負うことになります。
従業員への安全運転を意識付け、事故を起こさせないことは、企業にとって社会責任を全うする重要な課題の一つになるでしょう。
安全運転管理者制度を正しく運用することで、飲酒運転や無免許運転は管理者による運転前確認で未然に防止することが可能です。
これを機に、一度事業所内の安全運転管理者体制について見直してみてはいかがでしょうか。

