白ナンバー車アルコールチェック義務化に向け準備すべき事

 昨年白ナンバー車のアルコールチェック義務化についてお話ししましたが、2023年6月に延期していたアルコールチェック義務化について2023年12月1日施行予定という報道がありました。改正(予定)まで残り半年を切り、車両管理者や安全運転管理者の皆さんはアルコールチェック義務化に向けた準備は進められているでしょうか。そこで今回は白ナンバー車アルコールチェック義務化に向けて準備すべきことを、法改正のポイントをおさらいしつつお話ししたいと思います。

義務化となるにあたってのポイント

 昨年9月に掲載したコラム「どうなる?白ナンバー車アルコールチェック義務化」でも説明しましたが、今回の法改正のポイントは4点です。

  • 乗車前後に運転者の酒気帯びの有無を目視で確認する
  • 確認した記録は帳簿やデータで1年間保存する
  • アルコール検知器を使って確認を行う
  • いつでも正常に機能するアルコール検知器を備える

 警察庁が上記の内容を盛り込んだ改正案について2021年10月2日までパブリックコメントを求めた結果、「準備が間に合わない」といった意見が出たため、アルコール検知器の導入については2022年10月以降とすることになりました。 これによって、4月と10月に分けた段階的な導入が決定しました

※2023年8月9日修正 パブリックコメントの募集期間が終了し、警察庁は「アルコール検知器を使用したチェックを2023年12月1日から義務化する」ことを正式に発表しました。

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2022年4月1日からの義務(実施中)

・運転前後の運転者の状態を目視で確認
・確認した記録を帳簿やデジタルデータで1年間保存する

2023年121日から(予定)の義務

・酒気帯び確認をアルコール検知器で実施する
・いつでも正常に機能するアルコール検知器を備える

アルコール検知器導入については期間が猶予された形になりましたが、点呼やその記録の保管など早急に対応する必要があります。また、アルコール検知器についても社内で問題なく運用ができるよう検討し、検知器を確保する必要があるでしょう

準備すべきことは?

 法改正に向け、車両管理担当者や安全運転管理者が進めるべき準備を3つのポイントにまとめました。

1:点呼・アルコール検知の実施準備

2201_1_2.jpg 目視による点呼とアルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認する方法として、事務所で対面点呼を行う方法、またはスマートフォンやパソコンのビデオ通話で非対面点呼を行う方法があります。改正案では対面点呼を原則としていますが、直行直帰や出張など対面点呼が難しい場合もあるため非対面点呼も認められる方向のようです。社用車の利用頻度やドライバーの勤務体制に合わせて対面・非対面どちらでも対応ができる運用方法を検討しましょう

2:記録保存の準備

2201_1_3.jpg 酒気帯びの有無を1年間記録する必要があるため、運転日報のフォーマットや管理方法についても検討が必要です。最近では管理の手軽さから台帳での手書き管理やエクセル管理以外に、アプリやクラウドを使った車両管理システムの導入も増えています。車両管理システムでは運転日報以外に車検点検、免許証などといった車の管理全般で役立つ機能を多く備えている場合があるので、車両管理の効率化に導入をお勧めします

3:アルコール検知器の準備

2201_1_4.jpg 導入するアルコール検知器の種類や台数について、事業所ごとに整理したうえで検討しましょう。また、アルコール検知器はメンテナンスが必要な機器です。使用するたびに内蔵センサーが劣化し検知器としての制度が担保できなくなるため、使用者が交換する必要があります。多くの検知器には使用上限回数や交換期間(大体1~2年)が定められており、定期的なメンテナンスが必要です。準備した検知器の数だけメンテナンス時期を把握するのは難しいため、交換時期になると新しい機器が届くなど、支援サービスのあるソリューションを活用していくことも検討しましょう

アルコール検知器選びのポイント

 アルコール検知器には、センサーや測定方法、結果の記録方法などに違いがあり、運用方法によってどのアルコール検知器を使いたいかを選定する必要があります。ここではどのようなアルコール検知器があるか、それぞれのメリットとデメリットについてお話しします。

内蔵されているセンサー

アルコール濃度を判別するセンサーが内蔵されており、「半導体式ガスセンサー」と「電気化学式(燃料電池式)センサーの」大きく2つに分けられます。

センサー方式 原理 メリット デメリット
半導体式ガスセンサー センサー表面に付着する酸素量によってセンサー内部の電気抵抗値が変動。電気抵抗値が低いほど呼気中のアルコール濃度が高いと判定されます。 ・価格が安い
・センサーが小型
・測定時間が短い
・アルコール以外のガスに反応することがある
・周囲の環境に影響を受けやすい
電気化学式
(燃料電池式)センサー
呼気に含まれるアルコールガスを燃料として電気を発生させ、アルコール濃度を測定。電気の発生量が多いほど呼気中のアルコール濃度が高いと判定。 ・アルコール以外のガスに反応しにくい
・比較的高耐久
・周囲の環境に影響を受けにくい
・価格が高い
・測定時間が長い
・ランニングコストが高い
モバイル(携帯)型と据え置き(設置)型

 持ち運び可能な携行型と事務所に設置する据え置き型の2種類があります。使用するドライバーの勤務状況などを考慮して選択する必要があります。

タイプ 特徴
携行型(モバイル型) ・持ち運びがしやすいサイズ
・いつでもどこでも検知が可能
・事務所に戻る回数が少ない遠距離ドライバーの使用が多い
・個人用にも使用されることが多い
・据置型としての利用も可能な機器もある
・据置型より安価な商品が多い
据え置き型(設置型) ・持ち運びが難しいサイズ
・行き帰りに必ず事務所を出入りするドライバーの使用が多い
・管理者の前で測定するため不正を防げる
・業務用で選ばれることが多い
・ドライバーが多い事業所におすすめ
・携行型(モバイル型)より高額な商品が多い

 現在新型コロナウイルス感染症が流行しているため1台の機器を大人数で使用することに抵抗のある場合はモバイル型がよいとも言えますが、職場の環境に応じて選択しましょう。

測定方法
タイプ 特徴
吹きかけ式 機器本体の吹き込み口に息を吹きかけて使用するタイプ
ストロー式 ストローを差し込み、ストローを咥えて息を吹き込み使用するタイプ。吹きかけ式よりも周囲の空気の影響を受けにくく、息を逃しにくいため精度が高い。
マウスピース式 機器専用のマウスピースを使用して息を吹き込むタイプ。ストロー式同様、吹きかけ式よりも周囲の空気の影響を受けにくく、息を逃しにくいため精度が高い。

吹きかけ式はストロー式やマウスピース式と比較して周囲の空気の影響を受ける場合があるので、より精度を高めたい場合はストロー式やマウスピース式の吹き込むタイプがおすすめです。

記録方法
記録方法 特徴
プリント アルコールチェッカー本体からレシートのような用紙で結果がプリントされるタイプ。点呼記録簿に貼り付けて紙上で管理。
本体保存 機器本体のSDカード・内臓メモリーなどに保存されるタイプ。 後からPCに転送や保存ができるが、保存件数に限度がある。
専用ソフト 専用の管理ソフトをアルコールチェッカーと連動させ、PC上で管理するタイプ。別途管理ソフトの購入が必要になるものが多い。
PC接続 USBなあどで本体機器に接続し、PC上に保存するタイプ。
携行型・据置型どちらでも対応できる機器が多い。
クラウド 測定結果をクラウドへ保存するタイプ。
スマートフォンアプリと連動させて使用する機器が多い。
保存機能なし 本体保存・スマートフォンアプリ連動などの機能がないタイプ。
測定結果を記録したい場合は、その場で手書きやPC入力にて管理。

データの保管といっても専用ソフト上、クラウド上、本体からパソコンへ転送するなどあらゆる管理方法が選べますが、オプションとして追加費用が掛かるタイプもあります。そのため本体価格や内蔵センサーなども含め総合的に判断して決定するのがいいでしょう

最後に

 アルコール検知器の配備やドライバーの管理体制構築にはコストがかかり、業務負担も増えることから、なかなか導入に踏み切れない企業様もいらっしゃるかと思います。しかし、一度飲酒運転を引き起こすと、ドライバーはもちろん所属する企業にも責任があり、社会的責任を問われることになります。企業イメージ低下、取引先からの信用失墜など事業の存続を揺るがしかねない行為です。飲酒運転するドライバーを社内から出さないためには、企業側の積極的な対策は必要不可欠です。法改正をきっかけに、ご自身の会社の車両やドライバーの管理状況を見直していきましょう