事故削減を目指すドライブレコーダーの活用法

 交通事故やあおり運転などのトラブルに備え、ドライブレコーダーを装着する企業が増えていますが、「映像をどう活用すればいいかわからない」「管理が大変」といったお悩みを抱えてはいませんか。防犯や交通事故発生時に証拠として使われることが多いですが、運用次第で交通事故削減に活用できます。そこで今回は、事故削減を目指すドラレコの活用方法をお教えしようと思います。

ドラレコは分析ツールではない

 ドライブレコーダー最大のメリットは、交通事故やヒヤリハットといった運転状況をドライバーへ確実に伝えられる点です。ドラレコの役割を「事故の原因を追究し、客観的に分析できるツール」とお考えの方もおみえですが、分析するだけでは事故を減らすことは難しいでしょう。なぜなら、本来事故を減らすために必要なことは「ドライバーの運転行動を変えること」だからです。
 いくら事故を分析して伝えても、実際に運転行動を変えられるのは運転するドライバー本人でしかありません。分析した結果をドライバーたちへ周知・指導しても他人事と受け取られ、「自分は大丈夫だ」と運転行動を変えるまでには至りません。

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 ですがドラレコの事故映像を共有した場合、それを見たドライバーは自分の運転として置き換えるようになります。ヒヤリとする映像を見て事故の怖さを知ったドライバーが「自分の身にも同様の事故が起きるかもしれない」と理解すると、行動が変化します。こうした行動の変化を口頭で促すのは非常に難しいことですが、ドラレコの映像を共有することでスムーズにできるようになります

映像の活用方法3つのポイント

 ドライブレコーダーを導入したら、管理者は何をすべきなのでしょうか。まずは映像の活用方法について3つのポイントにまとめてご紹介いたします。

1:できるだけ多くの映像を見せる

2111_1_2.jpg ドライバーにできるだけ多くの映像を見せるようにしましょう。様々なパターンの事故やヒヤリハットを共有することで、運転者の想定力を上げることに繋がります。少しずつでも構わないので継続して映像を見せるようにしてください。見せることでドライバーに危険予測の引き出しを増やしていきましょう

2:普段走り慣れた道の映像を見せる

2111_1_1.jpg 交通事故を抑止するには、ショッキングな事故映像を見せればよいと考えがちですが、実はそうではありません。大きな事故であればあるほど自分事に置き換えにくくなり、どうしても他人事になってしまうからです。効果的なのは、普段走り慣れた道で発生したヒヤリハット映像を見せることです。運転中にドキッとした経験は誰しもあるはずです。日頃の運転映像であればあるほど、「自分の身にも事故は起きうる」と自分事に置き換えやすくなります。

3:ドラレコのチェックは継続する

2111_1_3.jpg ドラレコの映像を抽出するのが大変、時間がないとお悩みの管理者の方もいらっしゃると思います。ですが、ドラレコの映像チェックは定期的に継続することでドライバーの意識も高まり、危険運転の抑止効果が続きます。もし映像抽出が大変だと感じる場合は確認する映像の量にこだわらず、例えば1日1台分、1週間にメモリーカード1枚といったペースならどうでしょうか。できる範囲で管理者自身が継続できる量を設定することがポイントです。
 また、映像は無作為に抽出する方がよいでしょう。事故を起こしたドライバー、違反が多いドライバーのように特定の人ばかりをチェックしていると「なぜ他の人はチェックしないんだ」とドライバーが不満を募らせる恐れがあるので注意が必要です。AI搭載のドラレコなら、危険な運転行動を自動検知するので公平性を保てます。さらに映像を抽出する負担が軽減されるため、これから導入・入れ替えをされる場合にはお勧めです。

事故削減を目指すコミュニケーションのポイント

 ドラレコの映像を抽出し見せるだけでなく、管理者はドライバーへその内容をフィードバックしましょう。ドライバーへ気付きを与えることで、安全運転意識の向上に繋がります。その際に気を付けたいコミュニケーションのポイントをお伝えします。

1:指導より日頃のちょっとした声掛けを

 指導といっても難しく考えたり、厳しく接する必要はありません。映像を通じてドライバーとコミュニケーションを取ると考えるぐらいでちょうどいいのです。日頃のコミュニケーションの延長でも安全運転意識は高まりますが、ドラレコの映像を活用すれば感覚的であいまいだった話も論理的で具体的になります。

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 例えば、ドライバーはちゃんと一時停止して左右を確認したと思っていても、映像を見てみると停止と確認のタイミングにズレがある場合があります。ここで「ちゃんと確認した?」「ちゃんとしましたよ」というやり取りだけでは、問題解決には近づきません。だからと言って「人間の認知には2秒かかるから、停止した後に右・左と確認、再度右を確認したら6秒必要」だと指導すると、あいまいさはなくなりましたが、難しく聞こえます。この説明に映像を使えばより分かりやすく伝えられます

2:声のかけ方には注意が必要

2111_1_6.jpg 管理者の方は、1件でも事故を減らしたいと必死だと思います。時には事故を起こしたドライバーに対し「しっかりしろ!」「プロドライバーだろ」という気持ちになることもあるかもしれません。しかしそれを言ってもドライバーの行動は変わるでしょうか。人と人との関係ですから、伝え方はとても大事です。ドライバーの性格や信頼関係、その場の空気などを踏まえ、どう伝えれば行動が変わるかを考えた発言が大切です。ドラレコの映像の力を借りてドライバー自身に気づいてもらえれば、かける言葉は少なくても問題はありません。

3:悪い運転だけでなくいい運転にも目を向ける

 ドラレコの映像は悪い運転の指摘だけでなく、よい運転を褒めるチャンスでもあります。例えば子供の飛び出しでドライバーが急ブレーキを踏んだとします。その映像には本当に見えにくく予知もしにくい場所から子供が飛び出す様子が映っていたら「よく止まれたね」と急ブレーキを褒めることができます。褒めることでドライバーのモチベーションが高まり、その働きが会社にもプラスに働きます

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最後に

 ドラレコの活用や交通安全教育で大切なのは、とにかく継続することです。「同じ運転者が事故を繰り返す」というお悩みを持つ方もいらっしゃるかと思いますが、人の習慣を一度や二度の指導で変えることは不可能です。ですから、日々言い続けることが大切です。ドラレコの運用を日々継続し、御社の交通安全活動に役立てていきましょう。