納車遅れの原因?!半導体不足が車業界に及ぼす影響

 2020年に入ってからニュースで世界的な半導体不足に陥っているという話題を耳にします。この半導体不足は自動車生産にも大きな影響を及ぼしているそうです。なぜ半導体不足が自動車生産へ影響するのでしょうか。そこで今回は、半導体不足が自動車業界に与える影響についてお話したいと思います。

半導体とは

2105_2_1.jpg 半導体とは電気を通す金属などの「導体」と電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」との中間の性質を持つシリコンなどでできた物質や材料のことです。パソコンやスマートフォンの家電製品に搭載されており、デジタル社会において必要不可欠なものです。
 近年はビックデータを記憶するために使用するサーバーやIoT( Internet of Thingsインターネットで連携する技術)によってより多くの半導体が必要となり、また、今まで半導体を必要としなかった物にまで半導体を搭載するようになりました。
 車もそのうちの一つですが、今となっては車にも半導体は必要不可欠なものとなりました。例えば安全装備やナビゲーション、ETC車載器など多くの部品に半導体が搭載されています。特に最新技術を搭載したクルマは安全装備が充実している分、装備される半導体は多くなります。近年では自動ブレーキや運転支援などの機能の高度化で、車1台あたりに使用する半導体の使用量がさらに増えているのです

なぜ半導体が不足したのか

 これほど多くの部品に搭載されている半導体がなぜ不足する事態に陥ってしまったのでしょうか。この原因は2つあります。

1:コロナ禍による半導体需要

2105_2_2.jpg 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府からのテレワークの推奨や外出自粛要請により、今も巣ごもり需要が続いています。中でもリモートワークやリモート授業への移行は家電、パソコンやタブレット端末などの電化製品の活用を一気に加速させました。もともと半導体の需要は家庭用ゲーム機の新機種生産の本格化や、5G(第5世代移動通信システム)の普及に向けた通信機器の増産によって高まっており、充分供給が不足することは予想されていました。そんな中で追い打ちをかけるようにコロナ禍による需要が重なり、半導体の供給が追い付かない状態になりました

2:半導体工場の大規模火災

2105_2_3.jpg 2020年10月と20213月に発生した大手2社の半導体工場火災は、業界に大きな影響を与えました。まず、昨年10月に火災事故が起きた工場では自動車などに搭載する音響機器や通信機器向けのICを主に生産していましたが、クリーンルーム内などの損傷が激しく復旧まで1年以上かかることが分かりました。また、今年3月に火災事故が起きた工場では自動車に使われる最先端の300mmウエハーを生産していましたが被害は甚大で、半導体工場の火災では前代未聞と言われるほど大規模な火災でした。
 海外の半導体工場も渇水や大寒波の影響を受けて減産を強いられ、半導体は世界的な品薄状態となっています。新規の工場を作るにも最短で2年かかるため、この深刻な半導体不足の解消にはしばらく時間がかかりそうです

自動車製造業への影響

 自動車への半導体使用が増えた事に加え、世界的に発生している半導体の品薄状態により、自動車業界では、納車遅れが問題になっています。初めての緊急事態宣言が発令された20204月頃、トヨタ自動車のグループ総販売台数は前年に比べ3割以上減りました。しかし、中国や米国の販売がけん引する形となり9月以降の販売台数は前年を超え、予想を大幅に上回るペースで回復しました。このペースで自動車会社はV字回復となりましたが、11月頃から半導体の生産が追いつかなくなり、需給がひっ迫してきたのです。
 自動車メーカーは「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」供給することで効率的な生産活動を目指す戦略をとっています。しかし、在庫を確保していないため、今回のように複数の工場で火災が発生すると部品が不足し結果的に車が作れない事態に陥ります
 また、スマートフォンやパソコンに搭載されている性能重視の高価値な半導体は比較的メーカーが新規参入しやすいのに対し、車に搭載される半導体は走行不能になってしまうと生死に関わる問題となることもあるため、信頼性と耐久性の高さが重要視されています。よって新規の半導体メーカーが参入するのは難しいとされている点も供給不足が解消されない一因とされます。

最後に

 半導体不足はしばらく続くことが想定されています。新しく車両導入をお考えの場合は、納期は余裕を持っておいた方が良いでしょう。また、車検を機に新しい車への乗り換えをする場合には車検が切れる前に納車が間に合うようにする必要があります。車検切れを起こさないよう、車両管理者の方はいつも以上に余裕を持ってご検討ください