車の盗難対策は万全ですか?

 日本損害保険協会が発表した「自動車盗難事故実態調査」によると2017年11月の損保各社による保険金支払いは278件と前年比22件減少しました。しかし被害が特定車種に集中する傾向が強まってプリウスが全体の22.3%となり、4年連続で盗難被害車両ワースト1位だそうです。社用・私用問わず、プリウスに乗られている方は多いのではないでしょうか。また車種に関わらず、車の防犯対策は十分施されているでしょうか?
 そこで今回は車両盗難の手口から防犯対策、万が一盗難に遭った場合の対処についてお話したいと思います。

車両盗難の手口

 車両盗難の手口は年々多様化・巧妙化しています。窓ガラスを割って盗る原始的な方法以外にもいくつかの手口がありますのでご紹介いたします。

1:鍵のピッキング・作成

ピッキング ピッキングは車だけではなく家の侵入にも用いられる手法で、特殊な工具を差し込んで鍵を使うことなく解錠する方法です。解錠した後は電気配線を直結してエンジンを始動させてそのまま乗り去ってしまいます。またトランク部分のシリンダー錠の形状を読み取って型を取り、合鍵を作成したら車に戻って盗むケースもあります。また、その場で鍵を作成してしまうこともできるそうです。

2:ワイヤレスキーの解錠

リレーアタック ほとんどの方が使われているワイヤレスキーですが、機能の弱点を突いた盗難が増えているそうです。通常ワイヤレスキーは車とキーが発信している微弱な電波を相互受信して電子IDを照合することでドアの解錠・施錠、エンジン始動を行います。この動作はキーがクルマの周辺1メートル以内になければ作動しない仕組みです。

 しかし「リレーアタック」と呼ばれる手口では、特殊な装置を持った犯人の一人が車の所有者に近づいてキーの電波を受信します。その電波を増幅して仲間に送信し、電波をリレーさせながら車へと近づいていきます。すると車はキーから発信された電波と誤認してドアを解錠、エンジンを始動させてしまうというものです。

3:イモビライザーの無効化

イモビカッター 盗難防止装置として代表的なものといえばイモビライザーですが、この効果を無効化する手口もあります。イモビライザー搭載車のキーには電子チップが埋め込まれていて、そこにエンジン始動のIDが記録されています。それを暗号化してイモビライザーへ送信し、復号化してIDが一致した時にエンジンを始動します。

 しかしイモビカッターという特殊な装置は、車に搭載されているコンピューターへアクセスすることで鍵に内蔵されているID情報をリセットし、別のキーのID情報をコンピューターへ登録してエンジンを始動させてしまうことができます。

 この他にも、鍵を付けたままの車から運転手が離れた瞬間を狙う方法や、車をそのままレッカー車やクレーン車で持っていく等、ありとあらゆる手口があります。

車両盗難を防ぐには

 それでは車両盗難から車を守るにはどうしたらいいのでしょうか。車の窃盗はプロの窃盗集団によるものが多く、全てを防ぎきれるとは言い難いのが実情です。しかし何も対策しないよりはするに越したことはありません。そこでいくつかの防犯対策を挙げてみたいと思います。

1:車から離れる時は必ずドアロック

ドアロック 基本的なことかもしれませんが、車を離れる時は短時間でも必ずキーを抜いてドアロックするようにしましょう。特にコンビニの駐車場でエンジンをかけたままの車を見かけますが、このような車は犯人に「車を盗んでください」と言っているようなものです。少し車を離れるだけでもドアロックしてから車を離れる癖をつけるようにしましょう。

2:物を車の中に放置しない

車内に荷物を放置しない 車の中に貴重品が置かれているのが分かる状態になっていると、犯人からターゲットにされやすい傾向があります。鞄やパソコン等貴重品は車の中に放置せず、必ず持って出るようにしましょう。またやむを得ず車内に荷物を置く場合は、車の外から見えづらい場所に物を置いたり目隠しをする等して外から何があるか気づきにくくすることも大切です。

3:盗難対策装置を付ける

防犯対策装置 盗み出すのに時間がかかったりその場で音や発光するのを犯人は嫌がります。犯人が車を盗みにくくするために、盗難対策アイテムを取り付けてみましょう。ハンドルやタイヤをロックして運転をさせない「ハンドルロック」「タイヤロック」等の物理的に動きを封じるアイテムは比較的コストもかからず取り入れやすいアイテムです。車に振動を与えたり、ドアを無理やり開けるとアラームや光で威嚇する警報機も効果的です。

 またイモビライザーも有効な防犯装置です。未装着車も後付で装着できる場合がありますので、販売店に相談してみましょう。先に記したイモビカッターの被害が不安な場合、イモビカッターをガードするアイテムも販売されているようです。盗難後の対策にはなりますが、セキュリティ会社が提供する位置情報サービスを取り付けていたことで発見され、車が戻ってくるケースもあります。

4:盗まれやすい駐車環境を避ける

明るい駐車場 自動車盗難が発生するのはほとんどの場合が駐車場だと言われています。自宅の駐車場、立体駐車場、コインパーキングの中でも人通りが少なく人目に付きにくい場所や、街灯がなく暗い場所は特に狙われやすい傾向にあります。ですから、駐車する際には明るく人目に付きやすい場所に停めるのが大切と言えます。

 自宅の駐車場でもシャッターや門扉を付ける、防犯カメラやセンサーライトを取付けるなど、盗まれにくい駐車環境を作るように心がけましょう。

もし被害に遭ってしまったら

 もし万が一盗難に遭った場合はどうしたらいいのでしょうか。必ず行いたい3つのポイントをお教えしたいと思います。

1:盗難の届出を行う

警察へ届出 盗まれた事が分かったらまず警察へ盗難の届出を行いましょう。車の登録番号、車体番号、盗まれた状況、車内にあった物等を聞かれますので答えられるようにしましょう。車検証のコピーを取っておくと原本が盗まれていても車の情報をスムーズに答えられるので、家に一部置いておくようにするといいでしょう。最後に発行された盗難届の受理番号は必ず控えておくようにしましょう。

2:車両の一時抹消登録を行う

一時抹消届出 盗難届が受理されたら、次に最寄りの陸運局で一時抹消登録の手続きを行いましょう。申請手数料はかかりますがこれを行うことで車は一時的に廃車扱いになり、自動車税を支払わなくて済みます。手続きには印鑑証明、実印、あれば車検証のコピーを持参しましょう。陸運局の場所は、国土交通省のホームページから調べることができます。

3:保険会社へ連絡する

保険会社へ連絡最後に加入している保険会社にも連絡をしましょう。車両保険に加入していると車が盗難された場合も補償の対象となり、保険金が支払われます。車両保険には一般タイプと補償内容を限定した限定タイプ(保険会社によって呼び方が異なる場合があります)がありますが、多くの保険がどちらのタイプでも盗難は補償対象になっているようです。

 ただし、加入内容によっては全額補償されないケースもあるようなので補償内容はよく確かめる必要があります。また、盗難被害は実態調査に時間がかかるため保険金の支払いが1か月以上先になる場合が大半です。

最後に

 あらゆる防犯対策を講じても、窃盗犯も次から次へと新しい手口を考えています。新しい防犯対策を講じてもそれを打ち破る手口が出てくる「いたちごっこ」の状態が続いているため、100%車両盗難を防ぐというのは極めて難しいと言えます。しかしいくつもの防犯対策を二重、三重にも重ねておくことでその可能性を低くすることはできると思います。導入にかかるコスト等をよく考えて、自分なりのベストな防犯対策を施して愛車を盗難から守ることが大切です。