はじめに
2017年6月に起きた「東名高速あおり運転事故」を覚えていらっしゃいますでしょうか。この事故は、あおり運転によって夫婦が死亡し、子供2人が残されるという痛ましい事件として記憶されています。この事件は社会に大きな衝撃を与え、あおり運転の危険性が改めて認識されるきっかけとなりました。その後、2020年6月にあおり運転に対する罰則が創設されました。すでに5年が経過しているにも関わらず依然としてあおり運転のニュースはなくなりません。そこで本コラムではあおり運転の定義と、その被害に遭わないための注意点をご紹介します。
あおり運転とは
あおり運転とは、正しくは「妨害運転罪」といい、あおり運転を厳しく取り締まるため、2020年6月に創設されました。妨害運転の対象となるのは、以下の10の行為です。
- 通行区分の違反
- 急ブレーキ禁止違反
- 車間距離不保持
- 進路変更禁止違反
- 追い越し違反
- パッシング(減光等義務違反)
- クラクション(警音器使用制限違反)
- 幅寄せ(安全運転義務違反)
- 高速道路での最低速度違反
- 高速道路での駐停車違反
妨害運転をすると3年以下の懲役または、50万円以下の罰金が課されます。
妨害運転の中でも車間距離不保持が頻繁に行われている行為です。実は無意識に車間距離不保持をしてしまっている運転者も多くいます。事故防止のためには一般道の場合は車間距離を40m(高速道路の場合は100m)保持することを推奨していますが、時折5m程度の車間距離で走行し続ける車を見かけます。普段から5m程の車間距離で走行する人にとってはそれが当たり前の距離かもしれませんが、安全な車間距離を保持して走行している運転者からすると「あおられている」と感じてしまいます。そしてこの「あおられている」と感じたことがきっかけで、妨害運転を誘発することがあるのです。
進路変更が発端で妨害運転を引き起こしてしまう場合もあります。進路変更をした側は特に危険だと思わずに車列の間に入ったとしても、車間距離が十分ではないと入られた側が「急な割り込みをしてきた」と受け取ってしまい、入ってきた車両に対して妨害運転をしてしまう危険性があります。追い越し時の車間距離についても同じことが言えます。追い越すときに適正な車間距離を確保して行わなければ、追い越される側の運転者の恐怖心を招きます。
高速道路で起こりがちな妨害運転のきっかけになる行動は、『追い越し車線を走行し続けること』です。追い越し車線を走り続けるのは車両通行帯違反という道路交通法第20条の違反になります。道路の一番右側の車線は、文字通り追い越しをするための車線であり、それ以外の目的での走行は原則として認められていません。通常は左車線やセンターの「走行車線」を走りましょう。それだけで妨害運転に遭うリスクを下げることができます。
また、ウインカーを出すタイミングも大切です。ハンドルを切るタイミングでウインカーを出す人もいますが、ウインカーを出すタイミングは交差点の30m手前車線、進路変更をする3秒前と決められています。ウインカーを出すタイミングが早くても遅くても危険です。
運転中は、常に周囲の車の様子を確認しながら安全運転をするのが基本ですが、これは、妨害運転を受けないようにするためにも大切なことです。周囲を確認しないことによって、極端に車間距離を詰めることになったり、不要な急ブレーキをかけることになったりした場合、それが原因で妨害運転を受けることになるかもしれません。自分だけではなくほかのドライバーも安全かつ快適に運転できるよう、周囲を確認しながら運転してください。また、挙動があやしい車や急な割り込みなどの危険な行為をする車がいたら、できるだけ距離をとることが大切です。
最後に
知らず知らずのうちに、今まで挙げたような運転行動で他者の妨害運転を誘発してしまう場合があります。妨害運転の根底には「進路妨害された」という思いがあることがほとんどです。譲ってあげるという気持ちがあれば、あおられることもなく、皆がスムーズに走行することができます。相手がどう感じるかに配慮して、進路変更や右左折、追い越しなどの運転行動をとるように心がけてください。