未来の車社会を守る排出ガス規制

 自動車はガソリンや軽油等の燃料を燃やして走るため、必ず排出ガスが発生します。そして今、世界全体でその排出ガスによる環境問題が深刻化しています。一番の問題は二酸化炭素による温暖化ではないでしょうか。世界各国は削減目標を立て、昨年行われた第21回締約国会議(COP21)でも日本は2030年までにCO2排出量を2013年比26%削減という目標を掲げています。
 自動車の排出ガスには二酸化炭素の他にもさまざまな物質が含まれていますが、その中で人体に有害である物質については排出量が規制されているのをご存知ですか?
 そこで今回は「自動車の排出ガス規制」についてお話したいと思います。

排出ガスに含まれる成分

 自動車から出る排出ガスの成分は大部分が二酸化炭素と水蒸気ですが、微量に人体に悪影響を及ぼす成分が含まれることが分かっています。以下に排出ガスに含まれる成分と影響をまとめてみました。

名称影響
一酸化炭素(CO) 人体に対する毒性があり、濃度が高くなると生命の危険に陥る
炭化水素(HC) 呼吸器などへの粘膜の刺激、農作物への悪影響
窒素酸化物(NOx) のど、気管、肺などへの呼吸器に悪影響
粒子状物質(PM) 特にPM2.5は肺の深部へ侵入し、呼吸器・循環器へ悪影響
二酸化炭素(CO2) 地球温暖化の原因
硫黄酸化物(SOx) 大気汚染や酸性雨の原因

 この中でも一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素類、黒煙(粒子状物質)等の大気汚染物質について、日本では排出量が規制されています。

日本の排ガス規制について

 日本の排出ガス規制は高度経済成長期に深刻化した大気汚染の解消を目的に昭和41年に開始され、以降年を重ねるごとに強化されていきました。現在では3種類の規制方法によって排出ガス規制が行われています。

1:単体規制

単体規制一定の走行条件下で測定した排気ガス濃度が基準を満たしていない車種の新車登録をさせないことで、製造・輸入・販売を規制する手法です。これは新車登録時のみ適用され、中古車や使用過程車には適用されません。

2:車種規制

車種規制一定の走行条件下で測定された排出ガス濃度が基準を満たしていない車両の新規登録、移転登録及び継続登録をさせないことにより、基準を満たさない車両を排除する手法です。この方法は中古車及び使用過程車も対象となるため、単体規制よりも新車代替が促進されます。いわゆる自動車NOx・PM法による規制がこれに当たります。

3:通行規制

通行規制車種、用途、燃料種、排ガス性能その他について要件を定めて車両の運行を制限し、排ガス性能の劣る車両の流入禁止や渋滞緩和を図り、沿道の大気汚染を防止する規制手法です。各地方自治体のディーゼル車規制条例や尾瀬、乗鞍スカイライン、上高地などで自然保護のために行われるマイカー規制がこれに当たります。

排気ガスを減らす仕組み

 規制を受けて、自動車メーカー各社も排出ガスを減らす取組みを行っています。従来のディーゼル車よりもNOxやHCの排出量が少ないクリーンディーゼル車は徐々に世間に浸透しはじめており、ディーゼル車に比べてNOxやHCの排出量が少なく粒子状物質(黒煙)がほぼ排出されない天然ガス車もバスや商用車の車種を中心に販売されています。
 排出ガスを浄化する触媒技術や次世代自動車技術もメーカー各社が積極的に研究・開発を進めるとしており、今後環境にやさしい車づくりはより一層加速を見せるだろうと推測されます。

代替燃料車

最後に

 今後エコの取り組みはより一層進んでいくでしょう。先に挙げた低燃費で排出ガスの少ない車や、燃料電池車や水素自動車、それらを使用するための水素ステーションのインフラ整備に自動車メーカー各社や政府が取り組んでいます。
 そんな中、今私たちができることは何でしょうか。代表的なものとしてエコドライブがあります。運転中ほんの少し心がけをするだけで使用する燃料の節約、排出ガスの排出量を減らせるという取り組みです。(内容はコラム「地球にも人にもやさしい「エコドライブ」」を参照)

 加減速の少ない運転、適切な車両整備、荷物の積みすぎをしないなど、意識するだけですぐに取り組めるものばかりです。次にハンドルを握る時から、意識してみてはいかがでしょうか?
 11月に関東地方を襲った大雪の原因の一つに地球温暖化の進行によるラニーニャ現象があるそうです。私たちが次世代の地球環境を守るために、車と環境が共存できる社会になっていくことを願うばかりです。